【技術者コラムvol.24】悲しき非常用発電機
第2種/埼玉県さいたま市/A.T
ぼくは6年前にこのビルの地下に据え付けられた。
中央監視のおじさんが1日何回かそばを通るけど、運転してくれるのは月に2回10分だけ。
負荷がかかっていない運転だから、人間だと軽くジョギングしているくらいかな。
あとは年に1回だけフル運転のテストをしてくれるだけ。
ぼくに比べて、モーターやポンプや空調機は、がんがん運転して働いて役立っている。
おじさんもよく手入れしてくれているようだ。
朝になるとビルに会社の人が出勤してきて、モーターが動き出し、配管には冷水や温水が流れ始め活気をおびてくる。
おじさんもぼくのそばまでくるのだけど、すぐに行ってしまう。
「おじさーん。少しはぼくも動かしてー」と叫んでもおじさんには聞こえない。
「淋しいな・・・」
夜になって、照明が消えビルが静かになってもときどきモーターは動いている。
こんな日々の繰り返し。
ぼくは何のために生まれてきたのだろう。
6年前に、おじさんから聞かされた話では、
消防の決まりで、停電とか火災のとき動くように据え付けられたそうだ。
ということは、ぼくが死にものぐるいで運転するときは、ぼくの命も危ないのだろうな。
ぼくの命は20年から30年って言っていたっけ・・・
そしたら何も活躍しないで、工場へもって行かれて壊されてしまうのかな・・・