【技術者コラムvol.52】白黒人物画からグリーン年賀状への発想 -色の世界から光の世界へ-
第2種/埼玉県さいたま市/A.T
筆者は、趣味として人物画を描いている。なかなかプロの域に達するのは困難であるが、鉛筆を使って白黒のオリジナルな手法で、人物画を描く。雑誌の表紙を見ながら、濃淡の繰り返しで線を消していくと、限りなく写真のような人物画ができあがる。
あるとき、完成した「白黒人物画」を試しにカラーコピーでとってみた。そのとき、はっとしたのは、全くの白黒ではなく、若干グリーンがかっていたことである。色の世界は赤青黄の三原色で構成されているが、その三原色の配合が微妙にバランスを崩して、こういう現象が起こったものと直感的に考えた。これは、偶然とも言える発見であった。
しばらくして、今度は色の世界ではなく、光の世界へこの現象を応用すれば、同じような「グリーン画」ができるのではないかと考えた。光の三原色は赤青緑である。現在は、デジタルカメラの時代であるから、その「白黒人物画」を、写真という光学現象のなかで実現できないものかと思案した。
たまたま、年賀状の時期でもあり、ありきたりのものでは面白みがないと思っていたところだった。早速、原画を持って、近くの写真店で撮ってもらった。写真家の主人は、最初私の意図したことがわからなかったようで、随分むずかしい要求をする客のように思われた。「グリーンを若干強くしてくれますか。コントラストも微妙に変化させてください。」私は次々と自己の意図するイメージを主人に伝えた。
結局、私が考えたことは、色の世界でのアンバランスを光の世界で意図的に創るということだ。やっとの思いで完成した「グリーン年賀状」は、ひとつのオリジナルプレゼンテーションへと結びついた。
最初のひらめきから、色から光へと考えの角度を変えることにより、新しい技を自分のものとすることができた。これもひとつの発想の転換ではないかと考える。