【技術者コラムvol.53】電気パルスの発生

第1種/宮崎県延岡市/S.M

その昔、電気パルスを発生させ、それを応用する技術を研究していた。
この分野ではK大学の先生が幅広く研究されていたので、ご指導をいただいた。
最も簡単なパルス発生方法はコイルとヒューズによるものである。
つまり、ヒューズとコイル(インダクタンスL)に電流をiを流し、電流を増やすと、ヒューズが溶断し、そのときにV=-L×di/dtのパルスが得られる。
先生のパルスの応用例をいくつか紹介しよう。
雷が多い場所ではキノコの生育が良いことが知られている。
先生はシイタケのほだ木に電気パルスを与え、成育を促進させた。
これはシイタケが電気パルスにより刺激を受け、栄養の蓄積を急いだ結果と推定される。
火力発電所の排水口には水温が高いため、クラゲが多く集まる。
ここに電気パルスを与えるとクラゲが撃退されたそうである。
その他、消毒用となどパルスの応用範囲は広いそうである。
私はコイルに大電流を流し、急速にコイルを短絡し、電流を増幅させ、それによりヒューズを遮断し、大きなパルス電圧を発生させた。
コイルの初期電流をi1、終期電流をi2、コイルの初期インダクタンスをL1,コイルの終期インダクタンスをL2とすると、磁束保存法則より、L1×i1=L2×i2、つまり、i2=(L1/L2)×i1となり、L1>>L2のため、i2は大きく増幅される。
この電流でヒューズを遮断すると大きなパルス電圧v=-L2×(di2/dt)が得られる。
パルス電圧は数100kVとなり、このパルスを応用した装置を開発できた。