【技術者コラムvol.118】愛犬エルとの想い出

第2種/埼玉県さいたま/A.T

高校生の頃、犬を飼っていた。

飼っていたというよりは迷い込んできたのである。

当時、犬は放し飼い状態であった。

この犬はお腹をすかしているようであったので、餌を与えた。

首輪を付けていたので、誰かが飼っていたようである。

帰るところがあったらいつでも帰っていいよ、と語りかけた。

ところが何日経っても帰ろうとせず、どうやら我が家が気に入ったようである。

それで我が家の犬として、名前はエルと名付けた。

小屋を造ってやり、すっかり我が家の一員となった。

 

ある時、近くのお菓子屋さんから大判焼きをもらったようで、

それを咥えて、怒られるかなというような眼をして帰ってきた。

お菓子屋さんに確かめたら、エルが欲しそうな顔をしていたので、

好意でくれたようであった。

 

風邪をひいたときには段ボールを用意して、私の部屋で寝かせた。

エルはすやすやと眠り、しばらくすると回復して元気になった。

 

月日が経ち、私は大学に進学し実家を離れた。

エルと別れるのはさみしいが、しばらくは帰って来れない。

母の話では、学生服の生徒を見かけると、その後を付いていっていたそうだ。

そして、私ではないと分かるとがっかりして帰ってきたそうだ。

それを聞いて何ともいじらしい気持ちがして、涙が出てきた。

たまに帰省すると、すぐにすり寄ってきてウォンウォンと声を出し、尻尾をふって飛び上がって喜びを表現した。私が抱きしめると、ペロペロとなめてくれた。

 

犬の寿命は12年くらいである。

エルもその頃になると、弱ってきたようである。

エルの死には立ち会えなかったが、父はエルを段ボールに入れて、列車の見える丘に埋葬したそうである。好きだった大判焼きを入れて。

 

動物は言葉を出せないが豊かな心を持っている。

人間の気持ちを理解してくれる。

そして限りない癒しをもたらしてくれる。