第2種/埼玉県さいたま/A.T
高校生の頃、犬を飼っていた。
飼っていたというよりは迷い込んできたのである。
当時、犬は放し飼い状態であった。
この犬はお腹をすかしているようであったので、餌を与えた。
首輪を付けていたので、誰かが飼っていたようである。
帰るところがあったらいつでも帰っていいよ、と語りかけた。
ところが何日経っても帰ろうとせず、どうやら我が家が気に入ったようである。
それで我が家の犬として、名前はエルと名付けた。
小屋を造ってやり、すっかり我が家の一員となった。
ある時、近くのお菓子屋さんから大判焼きをもらったようで、
それを咥えて、怒られるかなというような眼をして帰ってきた。
お菓子屋さんに確かめたら、エルが欲しそうな顔をしていたので、
好意でくれたようであった。
風邪をひいたときには段ボールを用意して、私の部屋で寝かせた。
エルはすやすやと眠り、しばらくすると回復して元気になった。
月日が経ち、私は大学に進学し実家を離れた。
エルと別れるのはさみしいが、しばらくは帰って来れない。
母の話では、学生服の生徒を見かけると、その後を付いていっていたそうだ。
そして、私ではないと分かるとがっかりして帰ってきたそうだ。
それを聞いて何ともいじらしい気持ちがして、涙が出てきた。
たまに帰省すると、すぐにすり寄ってきてウォンウォンと声を出し、尻尾をふって飛び上がって喜びを表現した。私が抱きしめると、ペロペロとなめてくれた。
犬の寿命は12年くらいである。
エルもその頃になると、弱ってきたようである。
エルの死には立ち会えなかったが、父はエルを段ボールに入れて、列車の見える丘に埋葬したそうである。好きだった大判焼きを入れて。
動物は言葉を出せないが豊かな心を持っている。
人間の気持ちを理解してくれる。
そして限りない癒しをもたらしてくれる。
