【技術者コラムvol.65】太陽光パネルのささやき

第2種/埼玉県さいたま市/A.T

「さあー。今日もがんばらなくてはね。」

太陽光パネルたちは陽光とともに一斉に目覚め、発電の準備にとりかかる。

ここは東北の、とある村の太陽光発電所で10MWの発電ができるので、メガソーラーと呼ばれている。

丘陵地帯の地形を利用して、数年前に建設された。

パネルは中国で造られ、この地に運ばれてきた。

「この間の風はすごかったね。大丈夫だった?」

パネルAはパネルBに語りかけた。二人は隣り合わせに設置されている。

「そうね。私も身の危険を感じたわ。必死で架台のしがみついていたのよ。ここは広いからパネルの数も多くて、吹き飛ばされて怪我をしたパネルもあるそうよ。メンテナンスの人たちが話していたわ。ときどき点検してくれるから安心しているわ。」

眼下には、ポツンと一軒家がある。

「ねえ。あの家、人が住んでいると思う?」

「そうだね。前は人の動きがあったようだけど、今は夜になっても明かりが点かないから、だれもいないのではないかな。多分この丘陵地の持ち主だったと思うけど、近年、太陽光発電には反対派がいて、その矢面にたっていたかもしれないね。」

メガソーラーは自然エネルギーの切り札の一つだが、環境破壊の視点から反対する住民も少なくないと聞く。

「ところで私たちが発電した電力は、どうなっているのかしら?」

「我々パネルの発電電力は微々たるものだけど、全部寄せ集めて変電所から電力会社に送られているんだ。既にある電力と混ぜて供給しているんだ。」

「あと、私たちの命はどのくらいあるのかわかる?」

「そうだな。一般的に20から30年と言われているよ。人間だったら働き盛りなのにね。」

「与えられた命を全うするしかないのね。この日本の地で。環境破壊とか言われないように精一杯働かなくてはいけないね。」

日が落ちて暗闇が訪れると、一日の仕事は終わる。

「今日も一日お疲れさま。明日また元気に発電できるようゆっくり休んでね。」

「そうだね。おやすみなさい。」

パネルたちは、遠い故郷に想いをはせながらそっと眠りにつくのである。