【技術者コラムvol.79】台所のお局 熱中症

1種不合格/鹿児島県鹿児島市/T.A

嫁入り

彼女は43年前嫁入り道具の必需品として我が家やってきてからずっと台所の主役として君臨し既に塔が立っている。台所で彼女に勝る相手は無く圧倒的存在となっている。キッチンは彼女の寸法等に併せて設計され新しくなった。厨房の製品はこの間にガスコンロ、食器乾燥機、給湯器そして炊飯器が次々に世代交代し去っていく中一人老骨に鞭打って頑張っている。お局さんが若く売り出しの頃は高かった。私の給料の1.5倍位だったが当時は日本の家電が世界を席巻していた頃で給料1月分位の製品はざらでローンを組んで買う物であった。

 

働き者

彼女に休みは無い。24時間365日働き続ける。家庭で一番の大飯ぐらいとされるが働く時間を考えると当然であり悪口をいわれる筋合いはない。最近の若い者は小食で経済的と盛んに宣伝しているが当時の彼女についてのカタログにも同じことが書かれている。

10年くらい前彼女はストライキを起こした。上部に物が積まれ熱中症で冷媒ガス圧が上がり高圧カットが作動した。安静にしていればガス圧が下がり自然治癒するが裏に回り私がリセットし上部の物を取り除くと彼女は再び働き始めた。

今年8月は例年になく暑い。ある日の朝彼女は再び熱中症になり止まっていた。冷凍庫のアイスクリームは溶け包装が膨らんでいる。前回同様リセットをして働きだしたが次の日再び止まっていた。長年働いた疲労のせいだろうか、それとも本人の体力が低下してきたのだろうか。

 

頑張れ

同じ病気を2回起こした彼女を私は本格的に診断する事にした。放熱経路に障害物はないか裏の放熱板やコンプレッサ―を確認し掃除をしたが特に詰まり等はない。背部の放熱板と壁の隙間が狭かったので空け埃を拭いた後下部から投薬(扇風機で送風)してあげる事にした。年を取って熱に弱くなったのかも知れない。従来は床の化粧カバーで吸気口を塞いでも正常に働く設計である。投薬するようになって熱中症は完全に改善された。今回の熱中症がこの夏の暑さによるものか彼女の更年期障害によるものかは不明であるがこれから涼しくなれば彼女の労力はだんだん軽減される。来年の夏が近づく頃には注意してやらねばならないが彼女は私の家庭が始まり子供たちの成長や巣立ちそして夫婦2人に戻った今まで私達を見て来た。盛夏を過ぎ徐々に元気になった彼女は何事もなかったように元気に働いているがこれからも長生きして私達を見守ってもらいたい。彼女は私の自慢の一つである。