1種不合格/鹿児島県鹿児島市/T.A
電気工学を専攻した私の最初の仕事は製鉄所の設備の生産管理であった。既に出来ている既存設備を適切に管理し改善していく。駆け出しではその部門に所属していてもまだ企画立案はできない。3年後職を換え主任技術者となり自分で保全管理を企画できるようになった。その後建築設備の設計監理を長い間担当し多くの建物を造って来た。この仕事は竣工後の最適な使用を考え自ら図面を書き発注し監理するが1から自分の考えを生かせる反面建築物の一部でありどうしても建築に従属する立場となる。電力会社への就職が叶わなかった私であったが最後に発電所建設の仕事が回って来た。ごみ焼却によるタービン発電所建設である。仕様書をプラント業者に示し設計施工させる「仕様書発注」方式となる。
日本を代表するM社が受注していたが豊富な経験や高度な技術力をもつM社との協議を重ねた後建設が始まった。さすがはM社である順調に建設は進み、66kv受電後残工事、3月の試運転後供用開始となった。一般の発電所は燃料が石炭や原油で発熱量が安定しているが「ごみ」が燃料の場合発熱量は不安定であり燃焼後に多くの灰や残留物が発生する。これらの処理に多くの付属設備が必要となり発電出力は小さいが同時に需要設備でもありかなり複雑な設備となる。
発電機は1万kwに満たない小さなものであるが原理は一緒で炉の起動、ボイラー起動、タービン起動、同期、負荷取りの工程を経て通常運転となる。燃料の「ごみ」は発熱量が不均一なためよく撹拌してから供給するがどうしても燃焼の強弱ができ発電量が変動する。燃焼が極端に低下し発電機がタービンを回す「モータリング」で発電機がトリップした事も何度かあった。
ごみ発電所の目的は「発電」ではなくごみ焼却であり発電は焼却の副産物である。しかし発電のトラブルは炉の停止に繋がる場合が多く停止すると50万人分のごみは行き場を失う。炉の停止は絶対避けなければならない。
試運転期間が終わり引き渡しのその日に洗礼を受けた。引き込み鉄塔が直撃雷を受けサージで受電盤リレーとタービン電子ガバナが焼損し炉及び発電が停止した。
商用電源と発電機は同期しておりどちらか一方が停止しても単独で運転継続できるがこの時は両方停止したため焼却炉は停止となった。一発の雷で復旧費用は2000万円を超えた。
竣工後私は引き続き管理を行う事になった。運転自体は地元のビル管理業者が受諾したが初めての発電所で運転経験はなく技術力も無かった。その後管理していく中でなんとか炉と発電機の運転操作要領を作成する最後の仕事を終え私は発電所を去ったが夢であった発電所の建設ができ電気屋冥利に尽きた。
