【技術者コラムvol.87】A君のこと

第1種/宮崎県延岡市/S.M

私が入社した企業は昭和初期の操業で、配属先のN事業所には火力発電所が3カ所、水力発電所が7カ所、変電所や送電線もあり、電力技術を学ぶには恵まれた環境であった。

私はここで10年間電力の工事・維持・運用の仕事をした。

その後は電気技術を用いた装置開発の仕事を担当した。

定年が10年程先に迫ったとき、O事業所に転勤を命じられた。

丁度そのときに、O事業所では電気主任技術者が退職することになった。

有資格者は私しかおらず、私は兼務で電気主任技術者に選任された。

電気の仕事は実質A君が担当していた。

彼は40代でまじめで、技術も信頼できた。

私は彼に電気主任技術者の資格申請をするようにすすめた。

しかし彼はこれに賛同しなかった。

理由は責任を負わせられるのがいやだということであった。

私は何度か彼を説得した。

  • このままでは電気主任技術者を外部から呼ぶこととなる。
  • 保安規定に従って電気設備の工事・維持・運用を行っていれば罰則を受けることはない。
  • 仕事は責任感をもって臨むべきである。
  • 電気主任技術者の資格は定年後も有用である。

このようにして彼を説得し、彼はやっと重い腰を上げた。

あれから20年が経過し、最近彼と連絡を取ってみた。

彼は60歳の定年を過ぎていたが、再雇用され電力設備の仕事を継続しているそうである。

仕事はやりがいがあるとのことであり、安心した。